中学2年のとき、総合学習の一環で、
からくり人形について研究しました。機械を組み立てるのが、昔は好きで(今はなぜか興味が失われました)、そのとき作った「茶運び人形」とかが家にまだとってあります。
機構の考え方や、マジシャンの歴史の上でもからくり人形は重要なので、1年間の総合学習は結構楽しみでした。
日本は世界有数の工芸品の完成度が高い国です。からくり人形に関した本を多く、特に世界で始めて時計の機構を詳細に説明した「機巧圖彙・三巻」(1796年 からくり半蔵・著)は、世界的に有名です。時計のほかに、巧妙なからくり人形の正確な作り方が記載されています。からくり職人の多くは、時計技師でもあったそうです。
からくり人形で有名なものは、次のようなものだと思います。
「茶運人形」…手に持った台に、お茶の入った茶碗を置くと、そのまま前にすすんで運び、 お辞儀をします。客が茶碗を取ると、向きを変えて戻ってきます。
「弓曳童子」………台座に座った子供の人形が、筒に入った矢を一本ずつつまんで抜き出 し、弓に番えます。そして、自分で引き、的に向かって射ります。
「龍門滝」…………鯉の模型が、滝を登っていきます。そして、登りきると、鯉は煙とともに龍に変身し、消えます。糸で吊っているのではありません。
「梯子渡り人形」…平行に固定された梯子を、懸垂のようにして渡っていく人形。途中、「わざと」失敗してハラハラさせる機能がついています。
「いろは人形」……観客が表から指定した「いろは」の1文字を、小さな人形が棒で指します。
「品玉人形」………「品玉」は、江戸時代のマジックの呼び名の一つです。当時、日本には世界有数の優れたマジック文化がありました。小さな箱を持った人形が、台座に座っています。台座の上には小さな果物などの模型が置いてあります。人形が箱を伏せて上げると、その模型が別のものに変化しています。ディズニーランドにあるミッキーの人形と同じ仕組みです。
「文字書き人形」…名前や時間を、正確に書きます。
こういった人形は、全てぜんまいや砂、水銀を動力にして動いていました。江戸時代にからくり人形を見たあるヨーロッパ人は、「日本は蒸気を使わない技術において、世界最高の域に達している」といったそうです。
日本で、山車や人形浄瑠璃の文化も盛んなため、外国よりからくり文化の発達が進んだといわれています。
しかし、外国には「メルツェルの自動チェス人形」(自分で考えてチェスを指すとされた人形)や、「文字書き人形」、「物を食べて消化するアヒル人形」、「演奏する人形」、「全く仕組みが見えない人形(箱内部がガラス製)」、「サーカス人形」といった、精巧なものがあります。
チェス人形については、エドガー・アラン・ポーが仕組みを考察した短編を発表しています。
「物を食べて消化するアヒル人形」は、仕組みが一切伝わっていません。謎に包まれたものが、結構あるようです。
マジシャンにもからくり人形を作った人がいて、最も有名なのは
「近代奇術の父」ロベール・ウーダンです。この人はフランス人で、世界で始めて燕尾服を着た演技・明るい照明・スマートな口上を披露したため、こう呼ばれます。それと、「マジシャンは魔法使いを演じる俳優である」という言葉を残しました。
閑話休題。
ウーダンが作った人形としては「誰も復元できないからくり人形」や「文字書き人形」などです。
最近、「大人の科学」という商品で「茶運人形」や「弓曳童子」の制作キットを販売し始めました。静かなブーム…なんでしょうか。
どうにかして、人形がマジックをする、という演出をしたくて、頭の中を整理したのですが、やっぱり難しい…。